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銀土一本「W副長」 [SS小説]

ツイッターの銀土版深夜の60分一本勝負、お題「W副長」



 刀が跳ねるように弧を描く。
 血しぶきの舞い散る中、黒い制服の裾を翻して踊るように舞うように動く様はさながら演舞のようで。鋭い目をした黒い鬼と、同じく鋭い目をした白銀の髪を持った夜叉……二匹の鬼が舞う様は恐ろしいほどに美しく、そして同じくらい怖い風景だった。
 ざりっと死に物狂いで繰り出した攘夷浪士の刀が土方の上腕を掠る。その次の瞬間には、刀の持ち主である浪士は銀色の夜叉によって首をはねられ事切れていた。

「どうでもいいモブに触らせてんじゃねぇよ! お触りバーかここは」
「こんな時に下世話なことぬかすんじゃねえっ、てめェの頭の中かち割って中身出してやろうか」
「んな乱暴なことしねえでも銀さんのなんていくらでも出してやるよ? どうせなら可愛くベッドの上でおねだりして欲しいんだけど?」
「はっ、言ってろ」
 二本の交差した刀が相手の背中を護るように背後にいた敵を斬りつけ倒した。
「ちぇ、つれねえな」
 動く者のいなくなった空間で、悠々と血振りをすると銀時は刀を収めた。周囲を見渡しても呻き声を上げながら転がっている人間か屍しかない。

「あ、副長方こんなとこにいたんですか」
 目立ったところなど全くない地味な監察が背後に隊士を引き連れて駆け寄ってくる。
「あんたら二人で仲良くやってないでさっさと指揮取って下さいよ……痛っ、ってなんで俺殴られてんです?」
「なんか勘に障った」
「ちょっ、それ横暴ですって! 坂田副長ほんと横暴ですってば」
 傍までやってきた瞬間、坂田に拳でぶん殴られて山崎が涙の浮かんだ目で見上げる。
「邪魔なんだよテメーは。指揮たってもう後は撤収だけだろ。んなもん近藤にやらせろ。それかお前がやっとけ。俺たちこれから取り込み中だ」
 土方の腕をしっかりと捕まえ、山崎にそう言い置くと坂田は問答無用とばかりに背後から聞こえる文句に耳を貸さず歩き出した。

 暗がりにたどり着き、掴んでいた腕を離すとその体を壁に押しつける。
「この馬鹿力がっ」
 そう罵りながらも土方は手を振り払うことなく大人しく従って来たのだ。そこに土方ならではの謝罪の意味が込められているのだとは言われなくとも坂田には分かっていた。
「簡単に肌許してんじゃねえよ」
 制服をはぎ取るように奪い、露わになった傷口に舌を這わす。
「痛っ」
「痛くしてんのっ! お前に跡残していいのは俺だけなんだからなっ」
 鋭いけれどどこか迷い子のような頼りなさを残すその瞳。不安定なその存在を繋ぎ止めるように、土方は銀色の頭を掻き抱いた。
「……悪い」
 真選組のためならば自分が傷つくことすら厭わずに駆け出してしまう土方だ。そのたびにこの男が密かに傷ついていることを知っていた。
「んなことじゃ許してやんないから」
 土方の腕の中でふてくされたような声が聞こえる。
「俺が副長になったの、お前を護るためなんだからな」
 ーー仕事ちゃんとさせてよ。

 かそけき声が風に乗って土方の耳に聞こえた。


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